教えて!大棟梁

「仕口」と「継手」

 「仕口(しくち)」と「継手(つぎて)」とは、要するに材木と材木のジョイント部分のこと。なぜ名称が2つあるのかと言うと、「仕口」が材木どうし交差して接合する部分であり、「継手」は材木を継ぎ足してより長くするための接合部分であるので、それぞれ役割が違っているんだ。

 左の写真やマンガのP9にあるように、仕口・継手の基本的な構造は、凸状の材木を凹状の材木にはめ込む、あるいは咬ませるというものだ。基本形だけで20種類ほどがあり、応用形も数えていけば、かなりのバリエーションになるんだぜ。京都の町家なんかでは、仕口だけで約70種類ほどを使うそうだからな。これらには「追掛大栓継ぎ(おっかけだいせんつぎ)」「傾ぎ大入れほぞ差し(かたぎおおいれほぞさし)」なんていう風に、それぞれ名前がつけられている。それぞれ形も違うわけだが、これは何も、いち大工の趣味でこんなデザインにしているわけじゃないぜ。ジョイント部分の接合面ができるだけ広くなるように材木を削り取り、強度を上げて、材木にのしかかってくる荷重に対抗する、という意味があるんだ。  

 そして、なぜこんなにたくさん仕口・継手の種類があるのかというと、家のどの部分に入れるものであるかによって、これらを使い分けているからなのさ。それは例えば、梁の部分であれば引っ張る力に抵抗しうる形にし、土台と柱の部分であれば、とても大きな荷重に耐えうる形をチョイスする…という具合に。  

 さらに、“「無垢材」ってなに?”でもレクチャーしたように、木は種類によって硬さや水分量が違うし、たとえ同じ種類の木どうしをジョイントさせていたとしても、水分が抜けていく速度が寸分の狂いもなくぴったりと同じ、ってことはありえない。だから、木の経年変化が起こって縮んだり、反ったりしても大丈夫なように、その分の誤差も見越した上で材木をジョイントさせるのさ。こんな手仕事は、木の性質を知り尽くし、見極めてきた“日本大工の伝統芸”と言っても大げさじゃない、と俺は思うぜ。大工は力仕事だと思われているかもしれないが、頭をフル回転させて材木の配置を決め、注意深く、慎重に木を組まないと、いい家ができ上がらないということだ。

 ただし近年では、材木のみの接合じゃなく釘などの金物を使って補強する場合があるし、材木の削り出しを機械で行う「プレカット」という手法もあり、必ずしも大工の手仕事のみで済ませることではなくなってきている。そんなの大工っぽくないって思うかい? でも俺はこういう流れ、否定しないぜ。否定しないどころか、こういったものもうまく使いこなせてこそ、一流の大工と言えるんじゃないかな。だってそうだろう? 金物で補強したって木の良さは変わらないし、機械で削ったって、何の木にするか、どんな形にするかなんていう“削るまでのプロセス”は大工が考えるんだから、本質的なところは今も昔も変わらないのさ。  

 つまり、木の家を建てるときに大切なことは、俺のように木をすみずみまで理解してアモーレを注ぎ、プロセスも木も組み立てられる大工に頼むことなんだぜ、ベイビー。